西澤保彦『人格転移の殺人』

 『七回死んだ〜』には及ばないが、これもかなり面白い

人格転移の殺人 (講談社文庫)

人格転移の殺人 (講談社文庫)

あらすじ

 突然の大地震で、ファーストフード店にいた6人が逃げ込んだ先は、人格を入れ替える実験施設だった。法則に沿って6人の人格が入れ替わり、脱出不能の隔絶された空間で連続殺人事件が起こる。
 犯人は誰の人格で、凶行の目的は何なのか?

感想

 この人格転移というアイディアが非常に面白い。このアイディアによって、次々と引き起こされる殺人の身体上の犯人こそ分かっているが、中身の人格が誰かが分からない、というところ、そしてある時突然再び人格が入れ替わるというルールから「一体誰が、どのタイミングで殺人を犯したのか」という問題が出てくる。
 事件はかなり限定されているのだが、SF的な設定を利用して次々と新しい仮説を捻り出しながら、最後に思わぬところに着地するのが見事。
 また、人格転移というアイディアに対して非常に哲学的なアプローチを試みている所も興味深い。
 大傑作とまではいかないが、非常に面白い作品だった。★★★★★