連城三紀彦『美女』

　表紙がエッチくて困ります……

美女 (集英社文庫)

　短編集。個人的ベストは「喜劇女優」。次点が「夜の二乗」
「夜光の唇」
ありがちな四角関係にちょっと捻りが入っただけかと思ったら、ラストに思わぬ戦慄が待ち構えていた。
「喜劇女優」
ラストは予想できるものの、これでもかというほどの技巧を凝らしてそこへ持っていく手腕が凄い。短編にするにはもったいないくらいの作品。
「夜の肌」
死の間際の告白というテーマながら、不思議なほど淡々と物語が進行する。今にも崩れそうなまま最後まで穏やかに幕を閉じるのが不思議な感じ。
「他人たち」
主人公が自分の家族を崩壊させる過程を生き生きと話す様子がもの凄く怖い。だがラストには救いが感じられる作品。
「夜の右側」
四角関係からの殺人劇が思わぬところから二転三転する。トリッキーな作品。
「砂遊び」
捻りは持たせているが、なんだかよく分からないまま終わってしまった感じがする。微妙。
「夜の二乗」
トリックは至って単純なのだが、異常な事件の展開に完全に飲み込まれてしまった。
「美女」
最後の最後まで化かし合いと芝居尽くしの作品。それでいてほっとする。

　男と女をテーマにしたサスペンスの良作だと思う。★★★★☆