ニコラス・ブレイク『メリー・ウィドウの航海』
やっぱり他の作家とは違う気がする
メリー・ウィドウの航海 (ハヤカワ・ミステリ文庫 17-3)
- 作者: ニコラス・ブレイク,中村能三
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1978/04
- メディア: 文庫
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あらすじ
ギリシャ周遊の船旅に恋人のクレアと出かけたナイジェル。船には金満で華やかな未亡人とノイローゼにかかったその妹、有名なギリシャ文学の紹介者や精神分析に熱中する少女などがいた。
だが、不思議なことに彼らのほとんどが過去に何らかのつながりを持っていた。ナイジェルは不吉なものを感じたが、やがて事件が起こった。船上のプールに少女の死体が浮かび、同時に未亡人の妹が行方不明になったのだ……
感想
『野獣死すべし』でも思ったが、この作家は急がない。悠然と筆を進め、ギリシャの風景や人々の複雑な心理を描写しながら伏線を縦横に張り巡らせていく*1。このあたりは詩人でもある作者の腕によるものだろう。無理して話を進めようという感じがまったくないため、こちらも楽に読み進められる。
肝心の事件の方だが、全体の構図はトリッキーでよくできていると思う。ただ、この作品は伏線が丁寧すぎたりあまりにも探偵役の推理が表面に見えやすかったりしたこともあって、事件の真相がやや分かりやすかった。ちょっともったいない作品だ。。★★★★☆
*1:そのため、事件が起きるのは話も半ばを過ぎようかという頃になるが