天藤真『陽気な容疑者たち』

 軽妙、だけど重い。

あらすじ

 伯父の経理事務所に勤める「私」は、顧客の鉄工所経営者と労働組合の対立に巻き込まてしまう。おまけに、当の経営者がトーチカと呼ばれる堅牢な倉の中で急死するという事件にまで巻き込まれてしまって……

感想

 強欲な社長が堅牢な三重密室の中で死ぬ、という魅力的な謎が提示される。そのトリックもなかなかのもの。
 ただ、この作品のメインはむしろ容疑者達のどことなく間の抜けたユーモラスなやり取りだろう。しかしその中にさり気なく伏線をまぶして最後にちゃんとした解決を持ってくるのが凄い。
 解決に少しアンフェアっぽい怪しげな部分もあるのが瑕ではあるが、楽しく読めたので無問題。ラストも印象的。★★★★☆