連城三紀彦『人間動物園』

 なんとも異様な作品

人間動物園 (双葉文庫)

人間動物園 (双葉文庫)

あらすじ

 記録的な大雪の中、汚職疑惑の渦中にある大物政治家の孫娘が誘拐された。警察は被害者宅に急行するが、家の至る所に盗聴器が仕掛けられていて一歩も身動きが取れない。極限状況の中で追い詰められていく母親、懸命の捜査を続ける警察。やがて意外な事実が次々と明らかになる……

感想

 誘拐事件の被害者宅が盗聴器によって監視されているという異常な状況がサスペンスを盛り上げる。よくぞこんな異常な状況を思いついたものだと感心するが、もちろんこの作品の面白さは設定の異常さだけではない。
 事件が進むにつれ、警察、マスコミ、果ては被害者までが怪しげな行動を取り、誰もが疑わしく思えてくる。事件自体も徐々に色々な事実が明らかになるにつれ二転三転。
 ただ、最後に現れる構図は非常にトリッキーなのだが、それまであまりに怪しげな記述が多すぎてモヤモヤした印象が強くなってしまい、少し意外性が削がれてしまった気がする。ちょっともったいない作品。★★★★☆