パトリック・クェンティン『二人の妻をもつ男』
パトQが合作用のペンネームだったとは知らなかった。
- 作者: パトリック・クェンティン,大久保康雄
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1960/03/04
- メディア: 文庫
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あらすじ
小説家崩れのビルは、現在出版社の社員として社長の娘を妻に迎え、幸福な生活を送っていた。ところがある晩かつて彼の前から消えた前妻、アンジェリカと再会する。その時から彼の生活は少しずつ狂い始める。やがて殺人事件が発生する……
感想
文句なしにサスペンスの最高傑作といえる一品。平凡ながら幸福だった主人公が前妻に会った日から、彼の生活は音を立てて崩れ始める。
前半は前妻と今の妻の間で揺れながらどんどん深みにはまっていくビルが描かれる。ビルの視点で物語が展開するため、ビルの苦悩が読者*1に伝わってきて、息が苦しくなるほど見事なサスペンスとなっている。
後半は一転、捕まった前妻のために真犯人を見つけようとビルが奔走するが、今度は彼の周りの人々の虚飾が次々と剥ぎ取られていく。その末に明かされる意外な真相、ラストの衝撃とカタストロフィはトップクラス。素晴らしいの一言だ。★★★★★
*1:というか自分