クレイトン・ロースン『帽子から飛び出した死』

 さすがというかなんと言うか、マジック尽くしだな

帽子から飛び出した死 (ハヤカワ・ミステリ文庫 30-1)

帽子から飛び出した死 (ハヤカワ・ミステリ文庫 30-1)

あらすじ

 神秘哲学者のサバット博士が絞殺された。現場は何重にも鍵のかかった密室となっていて、しかも死体は床にチョークで描かれた大きな星の真ん中に置かれていた。星の周りにはローソクと不思議な文字。それはあらゆる錠を開けることのできる悪魔の召還呪文だった……

感想

 三重密室殺人事件にタクシーから消えた男、さらには足跡なき殺人といった不可能犯罪のオンパレードが密室好きには堪らない。これを薀蓄の嵐と共に解決するのは奇術師マーリニ。探偵だけでなく容疑者も霊媒、心霊学者、手品師、脱出奇術の大家、腹話術師と怪しげなのがそろっていて、全編マジック尽くし。非常に楽しく読める。
 途中で密室トリックの検討も行なわれるが、ここで出てくる仮説も非常に奇術的で細かいところがやたらとテクニカルだ。それでいてラストの解決は非常にスマートだし、大胆な伏線もよく出来ている。
 ロースンの代表作というのも納得。★★★★★