加納朋子『ななつのこ』

 第三回鮎川哲也賞受賞作

ななつのこ (創元推理文庫)

ななつのこ (創元推理文庫)

 短編集。個人的ベストは「一万二千年後のヴェガ」、次点が「一枚の写真」
「スイカジュースの涙」構図は割と普通のミステリだが、表面とは全く違う真相と「最後の一撃」には薄ら寒い思いがした。
「モヤイの鼠」言われてみればあまりに他愛ない真相なのに、あっさりやられてしまった。
「一枚の写真」主人公とその友人(主人公の未来像)のやりとりと、そこから浮かび上がる謎解きが非常に美しい。思わぬところから論理の飛躍が見られるのも良い。
「バス・ストップで」微笑ましい謎に微笑ましい解決。ほっとする小品、といった感じだ。
「一万二千年後のヴェガ」北村薫の「空飛ぶ馬」を彷彿とさせる謎だが、こちらは縦横無尽に伏線を張りながらファンタジックな着地を見せる。どことなくロマンチックな作品。
「白いタンポポタンポポや紫陽花といった花にまつわる謎解きは完全に脇役。主人公と一人の少女の交流を描く、温かい物語。
ななつのこここまでの物語がきれいにまとまる。ちょっと都合が良すぎる気もしないでもないが、全体をきっちりと締めた良作。
 温かい雰囲気を持った作品集。こういうのは嫌いじゃない(むしろ好きだ)が、★★★★★とするにはちょっとぬるすぎるかな。というわけで★★★★☆