ロバート・L・フィッシュ『懐かしい殺人』

 作者のこの思いつきに脱帽

懐かしい殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫 42-2)

懐かしい殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫 42-2)

あらすじ

 英国ミステリ作家クラブの創立者である三人の老大家。しかし彼らはいつしか時流に取り残され、作品を書いても受け入れられなくなってしまった。
 そんな中彼らは殺人請負業、その名も「殺人同盟」を組むことを思いつく。かつて小説で使った殺しのテクニックを駆使し、商売は順調に進んでいくが、やがて思わぬ事態が勃発して……

感想

 まず、この「殺人同盟」という思いつきがもの凄くいい。売れなくなった老大家達が生活のために殺人請負業を始めるという人を喰った設定、中盤の殺人に使われる華麗な手口は読み応え抜群。また、殺人に失敗して法廷で争うことになる後半の展開も非常に面白い。弁護士・パーシヴァル卿の悪徳ぶり、法廷での見事な作戦には思わず膝を打った。
 ミステリに対するパロディに溢れているのも楽しい。冒頭でやたら凝った手段と異常な動機がもてはやされている、と愚痴る主人公の三人。彼らによれば「昔ながらの単純で美しい方法こそが最上」なのだそうだ(笑)。
 決して「このミステリーがすごい!」というわけではない。でもこんなに面白い作品が手軽に読めないなんて*1損じゃないか。★★★★★

*1:現在絶版のはず