ピーター・ラヴゼイ『煙草屋の密室』

 ラヴゼイの第一短編集

煙草屋の密室 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

煙草屋の密室 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 傑作短編集として評価の高い一冊。確かに傑作だが、想像していたものと違って、伏線を練ったりトリックを見せたり、という作品はほとんどなかった。大部分は捻りの効いたショートショートといった作品。個人的ベストは「秘密の恋人」
 作品数が多いので、感想は一部だけ。
「肉屋」最初の死体の描写から登場人物が死体を見つかるまでの引っ張り方や、見つかった後の怒涛の展開が面白い。
「あなたの殺人犯」男の心情の変化がよく描かれている。ラストはシンプルかつブラックな味わい。
「ゴーマン二等兵の運」なんというか、笑ってしまうほどついてない男の物語。伏線を張りながら上手くオチに着地させている。
「秘密の恋人」主人公の女の心がだんだんと変化していく、と思ったら急転直下の一撃。ツイストの利いた一品。
「パパに話したの?」なんとも微笑ましい発端から異様なサスペンスへと展開していく。が基本的にぬるい雰囲気だ。嫌いじゃないけどね、こういうの。
「アラベラの回答」ラストにツイストの利いた結末が待っているが、よくよく考えるとぞっとする話。
「わが名はスミス」終盤に無理矢理な捻りを持たせたなあ、と思ったらそれが最後の最後、オチにすとんと着地。上手い。
「ベリー・ダンス」うーん、悪くはないんだけれども、なんとなく予定調和な気がしてしまった。
「見つめている男」どこかで見たような作品。もう一捻りあると良かったんだけど。
「女と家」ありがちなオチかと思っていたのにそこからもう半回転。きれいにやられた。
「煙草屋の密室」最後の最後まで二転、三転させるところがとてもいい。
 トータル評価は★★★★☆