カーター・ディクスン『貴婦人として死す』

 カー長編50冊目

あらすじ

 リタは老数学教授の妻、サリヴァンは俳優だった。いつしか人目を忍ぶ仲となった二人。ある日、リタとサリヴァンは絶壁へと続く二筋の足跡を残して消えてしまった。誰もが心中を疑わなかったが、二日後に二人の死体が発見された途端、状況は一変した。
 二人の死体には銃弾の跡が残っていたのだ。

感想

 「足跡なき殺人」がテーマになっているが、トリック一発の作品ではない。不可能状況の打破はどちらかといえば脇役で、事件の構造には色々凝った仕掛けがしてある。
 特に、中盤での意表を突くようなプロットの炸裂や解決と思われたところからの事件の急転ぶりには度肝を抜かれた。伏線も冴えわたっているし、なにより肝心のトリックの出来自体も非常に良い。
 カーの代表作、と呼ばれるわけだ。★★★★★