S=A・ステーマン『殺人者は21番地に住む』

 殺人鬼ものだけど、舞台は下宿屋。

殺人者は21番地に住む (創元推理文庫 (212‐1))

殺人者は21番地に住む (創元推理文庫 (212‐1))

あらすじ

 霧の深い夜に現れ、ロンドンを恐怖に陥れる殺人鬼<スミス氏>。手掛かりを求める警察に、犯人の家を突き止めた、という情報が入った。だが、問題の21番地は下宿屋なのだ。果たして犯人は下宿人のうちの誰なのか?

感想

 ステーマンは『六死人』*1が面白かったので、これも読んでみた。
 警察が21番地の下宿人に対して捜査を進めていくが、これがなかなか一筋縄では行かないのが面白い。
 まず、個々の下宿人のキャラが個性的で、読んでいて結構楽しい。また、警察が容疑者を逮捕するたびに次の犯行が起きて釈放されてしまったり、読者への挑戦状が二回も挟まれたりといった、遊び心あふれる展開も非常に面白い。
 最後に明かされる犯人の意外性もなかなかのもの。★★★★☆

*1:余談だが、霧舎巧『マリオネット園』でカケルが「妙に頭に残っているが何の本に出てきたか思い出せない名前」と言っているヴェンセスラス・ヴォロベイチクはこの『六死人』の探偵役である