山田風太郎『十三角関係』

 山風唯一のシリーズ探偵、荊木歓喜が活躍する作品集。

十三角関係 名探偵篇―山田風太郎ミステリー傑作選〈2〉 (光文社文庫)

十三角関係 名探偵篇―山田風太郎ミステリー傑作選〈2〉 (光文社文庫)

 個人的ベストは「帰去来殺人事件」。次点が長編の「十三角関係」
「チンプン館の殺人」トリックは分かりやすいが、それが舞台背景と見事に融合していて無理がないのが良い。
「抱擁殺人」トリックのキレもさながら、幕切れでの半太郎の心情が印象的。ちょっと胸が痛いです……
「西条家の通り魔」意外な犯人にバカトリックといった(この中では)割と普通のミステリ。だが、ラストの歓喜の一喝がスカッとさせてくれる。非常にいい味を出している。
「女狩り」これはまた随分とエロ……ゲフンゲフン。バカトリックと動機の落差が凄い作品。
「お女郎村」巧妙に一捻りされたプロットもよくできているが、そんなものより犯人の歪みっぷりが強烈だ。
「怪盗七面相」歓喜先生が怪盗七面相と対決。犯人は簡単だが、おかしな展開から鮮やかなラストが決まる。
「落日殺人事件」犯人のトリック、ロジックなどがやや分かりやすくなってしまっている。
「帰去来殺人事件」歓喜先生自身の事件、とでもいうべき一編。歓喜の過去が明かされることもあるが、大胆不敵なトリックや巧妙な事件の構図、最後の最後まで見せる逆転劇は素晴らしい。傑作。


「十三角関係」(長編)ショッキングな出だしで事件が幕を開けるが、その後はしばらく関係者の証言によって被害者の人物像を明らかにしようとする試みが続く。おとなしい展開ながらも徐々に意外な事実が浮かび上がる一方、どんどん謎が深まっていく。
 しかし後半、物語はもの凄い展開を見せ、歓喜先生は最後にはとんでもない真相を指摘する。意外な犯人、動機が強烈。
 個人的には嘘倶楽部での他愛無い冗談が異様なやり取りへと摩り替わっていくシーンが印象に残った。


 さすがというかなんというか。★★★★★