アガサ・クリスティー『ひらいたトランプ』

 そういえば『ABC』の時にそんなこと言ってたな

ひらいたトランプ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

ひらいたトランプ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

あらすじ

 日頃悪い噂の絶えぬシャイタナ氏からパーティーに招待されたポワロ。シャイタナ氏は「完全犯罪に成功した殺人犯達をお見せしよう」とポワロに語っていた。が、ポワロを含めた八人が二部屋に分かれてブリッジをしている間に、シャイタナ氏が刺殺された。容疑者はシャイタナ氏と同じ部屋にいた四人。しかも彼らはシャイタナ氏のいう「殺人犯」だった……

感想

 ブリッジの最中に殺人がおこり、居合わせた誰もが被害者を殺す動機を持っていた、という事件の構図はポワロ自信が『ABC殺人事件』の中で「理想の犯罪」として語っている。
 それによれば「単純な、まじりけのない犯罪」が純粋に心理学的な問題という点で、最も理想とする犯罪であるのだそうだ*1
 この事件に対して、ポワロはかつて語ったように、容疑者の過去を探ったり、ブリッジの得点表から各人の性格を判断したりという独特の捜査を行なう。ミステリにありがちな手掛かりや物的証拠はむしろ意図的に排除されているような印象さえ受ける。ポワロの心理的探偵法を最も純粋な形で見せたかったのだろう。
 そのためか、どちらかといえば容疑者達のドラマに重点が置かれている感じだった。結構面白く読めた、がやはり個人的にちょっと馴染まなかったので★★★☆☆

*1:数年前に読んだきりなので内容が曖昧なのは勘弁してください