西澤保彦『瞬間移動死体』

 今度はテレポートかい

瞬間移動死体 (講談社文庫)

瞬間移動死体 (講談社文庫)

あらすじ

 妻に苛められることで愛を確認するというヒモ状態の主人公。だが、どうしても許せない一言を言われた彼は妻の殺害を決意する。彼は自分の能力を使った計画を練るが、事態はとんでもない方向へ……

感想

 というわけで、今回はテレポートのSFミステリ。今まで同様、能力に縛りがかけることによってミステリとしての面白みを出しているのだが、今回はちょっと弱い気がする。
 というのはその能力の縛りにる事件の捻りが予測しやすくなってしまっているのだ。状況がかなり限定されているので、なんとなく真相が見えてしまっている。それでも最後に逆転劇を用意しているし、SFミステリとしてここまでのものを組み上げるのはやはり難しいのだろう、と思う。しかしやはり厳しい。★★★☆☆


 以下ネタバレ
 この作品の捻りのポイントは「バランスウェイトとして何が送られたのか」であるが、それが捻りとして機能しなかったように思う。
 行きに何が送られたのかに関わらず、ロスの<うぐいす荘>では血痕がなかったのに日本では血痕があったということから「犯行が日本で行なわれ、死体がロスに飛んだ」ということが割と簡単に分かってしまう。また、ナイフの指紋が<うぐいす荘>でも出たことから、犯人は関係者の一人と考えられる。そしてこの条件を合わせるだけで、消去法で犯人が割れてしまうのだ。
 このあたりが弱いと感じた理由だろう。