倉知淳『壺中の天国』
川神さんが自分のブログの名前にするほど偏愛するわけだ。これは傑作!
- 作者: 倉知淳,小岐須雅之
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2003/05/24
- メディア: 文庫
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感想
という筋立てではどう考えても本格にならなそうなのに、それを見事な本格ミステリとして仕上げた、ということがまず凄い。
本来サイコ・キラーと本格は物凄く相性が悪い。サイコ・キラーものでは基本的に容疑者が限定されていないから、犯人の特定は不可能に近い。が、作者は見事にそれをやってのけた。あちこちから伏線を寄り合わせ、犯人の条件を搾り出すシーンは圧巻。よくもまあこれだけ伏線を丁寧に張ったもんだと感心してしまう。
また、縦横無尽に伏線を張り巡らせながら、ただの小説のように仕立て上げてしまう技術は素晴らしい。主人公の知子とその家族が捜査資料を見たりするシーンはあるが、大部分は普通の小説になっている。
あえて弱点を挙げるとサスペンスに乏しいことか。しかし、それはこの形では無理もないだろう。犯人当ての伏線のキレは恐ろしいほどだが、ミッシングリンクには(個人的には)笑ってしまった。まあでもいいさ、ミッシングリンクだし。
デアンドリアの『ホッグ連続殺人』と並ぶ、数少ない<本格×サイコ・キラー>の傑作だろう。★★★★★
- 作者: ウィリアム・L.デアンドリア,William L. DeAndrea,真崎義博
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/01/01
- メディア: 文庫
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