アリステア・マクリーン『女王陛下のユリシーズ号』

 でも女王陛下は関係ないし、ミステリでもない。

 題名こそ『女王陛下の〜』となってるが、本編には女王陛下のじの字も出ない。
 というのはともかく、これは男の物語である。ソ連に向かう船団の護送をするユリシーズ号に襲いかかる北極海の猛吹雪、Uボート爆撃機……艦がズタズタになり、何人もの乗組員が死に、発狂する者が出てきても彼らは進む。それが英国海軍の一員として与えられた命令だから。
 全編を通して痛めつけられる乗組員たちには格好良さなど微塵もない。しかしそれでも彼らは最高の男達であり、ヴァレリー艦長が言った通り「神が一艦長にさずけた最高の乗組員」である。
 読んでいて胸が熱くなる作品だ。★★★★★