エドワード・D・ホック『サム・ホーソーンの事件簿Ⅳ』

 もはや水戸黄門の域に達しつつあるホックの不可能犯罪短編集。個人的ベストは「要塞と化した農家の謎」
「黒いロードスターの謎」一度それらしい推理を崩していくところが面白い。新しい看護婦メリー・ベストがいきなり活躍。
「二つの母斑の謎」プロットの捻りがよくできている。ちょっと偶然に頼りすぎる気もするが。
「重態患者の謎」状況は面白いのだが、伏線があからさますぎて分かりやすいのが難点。
「要塞と化した農家の謎」堅牢な密室も素晴らしいが、ミスディレクション、トリックなども非常によくできている。
「呪われたティピーの謎」ちょっと特殊な知識がないと解けないか。
「青い自転車の謎」消失のテクニカルなトリックが素晴らしい。ただしアレは余計だった気がするが。
「田舎教会の謎」不可能状況からの誘拐事件。だがこのトリックはさすがに無理じゃないか?
「グレンジ・ホールの謎」トリックを成立させるための小技が非常によくできていると思う。
「消えたセールスマンの謎」一風変わった人間消失もの。小道具の使い方が面白い。
「革服の男の謎」一緒にいた人間の存在を否定されるという、これも変わった作品。解決も非常に面白い。
「幻の談話室の謎」部屋の消失という謎が強烈。伏線の回収の仕方が上手い。
「毒入りプールの謎」プールからの出現という謎が面白い。殺人のトリックもなかなかのもの。
「フロンティア・ストリート」今回のボーナストラックはベン・スノウもの。ミステリとしては特にどうということはない。
 特に飛びぬけた傑作はないが、安定感は抜群。★★★★☆