ジョイス・ポーター『切断』

 朝っぱらから凄いものを読んでしまった。

切断 (ハヤカワ・ミステリ文庫 32-1)

切断 (ハヤカワ・ミステリ文庫 32-1)

 ドーヴァー警部シリーズ最高傑作(?)といわれる第四弾。
 この作品、かなり評価が割れると思う。人によっては駄作と言うだろうが、そうでない人は絶賛するに違いない。
 かく言う僕は後者である。これは凄い!
 何が凄いってこの作品、空前絶後アホらしさを誇るのである。よくもまあこんなことを思いついたもんだと尊敬する。しかもこの思いつきを書いてしまうのが凄い。こんなこと普通は思いついても書かないって。
 実は伏線が丁寧に張ってあったりするのだが、その上手さもこの解決の前では影が薄い。
 間違っても人には勧められないが、一生忘れない怪作だ。★★★★★


 ところで原題の"Dover and the Unkindest Cut of All"(ドーヴァーと最も残酷な切断)は解説によるとシェイクスピア劇「ジュリアス・シーザー」(今はユリウス・カエサルか)でシーザーがブルータスに殺される場面での科白によるらしい。が、読み終わってから題名を見ると正直笑いが止まらない。やばい。