ジョン・ディクスン・カー『剣の八』

剣(つるぎ)の八 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

剣(つるぎ)の八 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 カーには珍しいフーダニットに特化した作品(その理由については解説で霞流一氏が解説している)。それでもやっぱりタロットカードやポルターガイストといった怪しげな小道具を使っているところにカーらしさを感じてしまった。
 しかし、これらの謎の扱いがあまり良くない。どちらの謎もかなり魅力的ではあるのだが、全体から完全に浮いてしまっているのがいただけない。
 不満は他にもあって、ヒロインらしき女が出てきたと思ったらその後完全に存在が消えていて肩透かしを喰らったり、面白そうなプロットがあっさりと解かれたりと、どうも全体のバランスが悪いような気がする。
 フーダニットとしてのキレは悪くはないのだが、イマイチ感がぬぐえない。★★★☆☆