ジョン・ディクスン・カー『疑惑の影』

疑惑の影 (ハヤカワ・ミステリ文庫 カ 2-10)

疑惑の影 (ハヤカワ・ミステリ文庫 カ 2-10)

 フェル博士登場作品だが、実質的な主人公といえる弁護士のバトラーが法廷での弁護、アクション、最後の犯人との対決と大活躍する。その分フェル博士の影が薄かったのが少し残念だが。
 二つの毒殺事件がメインだが、悪魔崇拝の教団が登場したりして、ちょっと興味が分散してしまったのはもったいないと思った。しかし不可能に見える毒殺トリックは充分よく出来ているし、何よりプロットの巧妙な捻りによる真相の隠し方の上手さはさすがカー、と思わせるものがある。★★★★☆