カーター・ディクスン『赤い鎧戸のかげで』

 北アフリカのタンジールを舞台に、HMの大暴走が楽しめる(笑)。冒頭の空港に降り立つシーンからもう爆笑ものの展開だ。これにモーリーン&ホアンとビル&ポーラの二組のカップルのいちゃつきや、中世を舞台にした冒険小説ばりの活劇が絡んでくるから、物語としては非常に面白い。
 肝心のミステリ部分、怪盗アイアン・チェスト消失の謎解きには思わず力が抜けてしまったが。しかし楽しめたからか、不思議と腹は立たない。『魔女が笑う夜』と双璧をなす、愛すべきバカ作品だ。★★★☆☆