高木彬光『人形はなぜ殺される』(光文社文庫)

人形はなぜ殺される 新装版 高木彬光コレクション (光文社文庫)

人形はなぜ殺される 新装版 高木彬光コレクション (光文社文庫)

 これは間違いなく傑作だ! 殺人の予告劇のような人形殺しに対して、「人形はなぜ殺されるのか?」という疑問が冒頭から何度も読者に投げかけられる。そしてその疑問に対して完璧な解答が与えられる。
 ケレン味はあまりないのが個人的にはちょっと不満だが、ミステリとしての完成度は恐ろしく高い。犯人の意外性、トリックの良さ、そしてなにより「人形を殺した理由」の明確さが素晴らしい。


 以下この本に収録された短編について。
「罪なき罪人」本格ではないが、いわゆる「消されたアリバイ」のサスペンスに愛憎劇が絡んで話がスピーディーに進む。プロットの捻りもいいと思う。
「蛇の環」これまた愛憎劇とスピーディーな展開が目を引く。もちろん全体の構図もよくできている。
 ミステリベスト100を『刺青』からこっちへ変更。★★★★★