我孫子武丸『探偵映画』(講談社文庫)

探偵映画 (講談社文庫)

探偵映画 (講談社文庫)

 失踪した監督だけが知っている『探偵映画』の解決シーン。それを巡って展開される推理合戦が非常に面白い。犯人になって目立ちたい役者たちの自白(?)合戦、主人公の組み立てる仮説などもよく考えられていると思う。しかしそれ以上に最後に明かされる監督自身の解決は良かった。もちろん解決それ自体の出来の良さもあるが、それ以上に提示の仕方が鮮やかだったと思う。
 作品全体が軽い感じだが、それも監督の失踪でテンパるスタッフや役者たちの様子とマッチしていると思う。あえて難癖をつけるなら監督失踪の理由がやや説得力にかけることか。それでも非常に面白い。★★★★★