ジョン・ディクスン・カー『引き潮の魔女』(ハヤカワミステリ文庫)

 歴史ミステリに分類されている作品だが、舞台が二十世紀ということもあってかあまり「歴史」という感じはしなかった。物語の展開も『ビロードの悪魔』『火よ燃えろ!』といった中世を舞台にした作品と比べると大人しい感じがする。
 事件は足跡なき殺人もの。このトリックはなかなか面白かったが、わざわざ捻りを入れる必要はなかったような気がする。もっと上手く状況設定をすれば効果が上がったと思うのだが……。主人公のガースとトウィッグ警部の推理合戦は面白かった。★★★☆☆