殺人鬼――1枚ミステリ――

 部屋の中央に女が仰向けに倒れている。彼女の左胸にはナイフが刺さっていた。
「彼女を殺した<ビッグ・ベビー>はこの中にいる!」
 警部は室内の六人の男女を見回した。
「そんな! 若い女性を殺して、胸を切り取る殺人鬼がこの中にいるなんて!」と彼らの一人が叫ぶ。
「この中に奴がいるのは間違いないんですか?」と探偵が警部に尋ねた。
「部下達が完全にこの家を包囲していた。逃げられるはずはない。」と警部は答えた。
「それなら犯人は一人しかいません。」と探偵。
「本当か! 誰なんだ!」警部は探偵に詰め寄った。
「彼女ですよ。」探偵は、死体を指した。
「彼女は追い詰められたのを知って、自殺したのです。」
「なぜそう言い切れるんだ?」
 警部の問いに、探偵はこう答えた。
「胸を刺したら、後で切り取れないからです。」