ジョン・ディクスン・カー『九つの答』(ハヤカワ・ミステリ)

九つの答 (ハヤカワ・ミステリ 394)

九つの答 (ハヤカワ・ミステリ 394)

 カーのある短編と状況設定は同じだが、解決が違っている。この作品では話の途中途中で作者が題名通りに(原題は"The Nine Wrong Answers")九つの誤答を出していって、読者に挑戦している。誤答のうちには「なんでわざわざこんなことを断るんだ?」と思うようなのもあるが、やはり全体的に見ればよく出来ていると思う。
 プロットや伏線の張り方は上手いが、もともと短編だったものを長編にしたことでミステリとしては少し薄くなってしまった感じもするのがちょっと残念。しかし、主人公のビルとヒロインのマージョリーの痴話喧嘩やビルとハースト氏の対決など、小説の部分でも楽しめたので良かった。★★★★☆