殊能将之『美濃牛』(講談社文庫)

美濃牛 (講談社文庫)

美濃牛 (講談社文庫)

 横溝正史へのオマージュといった感じの作品。とはいえ、飛騨牛になりそこねた美濃牛や内容のはっきりしないわらべ唄、怪しげな奇跡の泉など、それぞれのガジェットはパロディ風になっている。現代の社会の中で横溝作品がどうなってしまうかを実践したのだろうか。
 ただ、僕はガジェットを「あればその分面白いが、別になくても構わないもの」ぐらいにしか思っていないため、これがパロディとして面白いか、と聞かれると……微妙なところである。
 ミステリとしてはまあ面白いが、これも別に750ページ(文庫版で)もかけてやることでもないんじゃないか、というのが率直な感想。
 横溝作品を読んだ人ほど楽しめる作品なのかもしれない。★★★☆☆