イズレイル・ザングウィル『ビッグ・ボウの殺人』(ハヤカワ・ミステリ文庫)

ビッグ・ボウの殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫 サ 4-1)

ビッグ・ボウの殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫 サ 4-1)

あらすじ

 12月の朝、ロンドンのボウ地区で下宿を営むドラブダンプ夫人はいつもより遅く目覚めた。下宿人のモートレイク氏はもう出かけたらしい。夫人は彼の友人を起こしに二階に上がったが、ドアには鍵がかかり、返事はなかった。不安に思った夫人が近所に住む元刑事、グロドマンにドアを破ってもらうと……

感想

 「有栖川有栖の密室大図鑑」によれば史上初の密室トリックということですが、歴史的な価値を別にしても非常に面白い作品だと思います。この作品の凄いところは密室トリックが明かされてそれでおしまい、という単純な形ではなく、新聞の投書という形でいくつもの解決案が出てきては崩される、というパターンを実現しているところです。また、法廷でのウィンプ警部が披露する推理は巧妙の一言。
 グロドマンとウィンプの推理合戦や皮肉な幕切れなど、密室トリック以外の面白さも保証……はできませんが、僕は面白いと思います。
 古いからといって侮るなかれ。ぜひ読んでみてください。


その他、19世紀の密室トリック
モルグ街の殺人/エドガー・アラン・ポオ(創元推理文庫『ポオ小説全集3』など)
まだらの紐/アーサー・コナン・ドイル(『シャーロック・ホームズの冒険』など)